東京高等裁判所 昭和57年(ネ)1147号 判決
原審における被控訴人本人尋問の結果によれば、本件各手形の用紙は、昭和四〇年ころ被控訴人が自動車月賦購入のため金融機関に当座預金口座を開設し交付を受けた手形用紙のうち、右月賦支払完了後余ついたものを藤井正夫に頼まれて同人に渡したものであることが認められる(被控訴人は当審において本件各手形用紙は被控訴人の意に反して藤井に奪われたものである旨を供述しているが、首尾一貫せず、到底信用できない。)ところ、《証拠》の各一、二の用紙は支払場所として株式会社静岡銀行館山寺支店と印刷され、かつ用紙番号の付されたいわゆる統一手形株式によるそれであって、かかる様式による手形用紙は金融機関において交付先を控えてあり、当該手形用紙を用いてその交付した相手以外の名義で振出された約束手形についてはたとえ法律上の手形要件を具備したものであっても当該金融機関においてその支払に応じないものであることはいやしくも手形取引に関係する者にとっては常識とされているところであるから、被控訴人が藤井に右各手形用紙を交付するに当っては、藤井が右各手形用紙を用い、被控訴人の名義を用いて約束手形を振出すことを容認し、その旨の代理権限を藤井に授与したものと推認される。
(石川 寺澤 寒竹)